セラミドとNMFはどちらが大事?

セラミドに比べて”地味”なNMF

お肌のバリアにとって重要な3要素

皮脂・セラミド・NMF

皮脂やセラミドは乾燥肌や敏感肌にとって大切だとよく言われますし、セラミドはCMやSNSでも頻繁に目にします。

その一方で、NMFについてはあまり情報がありません。

スキンケアにおいてNMFはあまり重要ではないのでしょうか?

今回は、NMFとセラミドの働きの違いについてお話ししつつ、どちらが乾燥肌に効果的かをご紹介します。

セラミドの働き

まず、セラミドについてです。これは非常に有名な成分で、名前を耳にしたことがある方も多いでしょう。

セラミドは「細胞間脂質」と呼ばれる、お肌の細胞と細胞の隙間を埋める脂質の主な成分がセラミドで、全体の約50%を占めています。

セラミドは脂質でありながら、水にも油にもなじみにくい特性を持っています。このセラミドが層を形成することで、水分を保持したり、異物が肌内部に侵入するのを防いだりする役割を果たすのです。

ただし、「セラミド」と一言で言っても、

人型セラミド(例:セラミドEOPやEOS)

疑似セラミド

馬などから抽出されるセレブロシド

米から抽出されるグルコシルセラミド

など、様々な種類があります。

これらのセラミドは化粧品やスキンケア製品に配合され、多くの種類が存在しますが、実際には人の肌にはさらに多くの種類のセラミドが存在し、分子種で分けると1581種類に及ぶと言われています。

特にアトピー肌や敏感肌といったバリア機能が低下している肌では、セラミドEOPやEOSなどが不足していることいが報告されており、スキンケアでは「どんなセラミドを取り入れるか?」も大事です。

また、アトピー肌では、セラミドの長さが短くなり、質が低下していることもわかっています。この質の低下が、バリア機能の低下に繋がっていることもわかっています。

最近の研究では、セラミドの質の変化がアトピーの症状の予測に使える可能性が示されていて、敏感肌やスキンケアだけでなく、治療の分野でも注目されている成分なのです。

アトピー・敏感肌とセラミドの関係性について

NMFの働き

NMF(天然保湿因子)は角層細胞の内部に存在し、水分を保持する役割を担っています。

一般的にスキンケアでは「お肌に水分を与えましょう」と言われますが、実際にお肌が乾燥する原因の一つは、水分そのものが不足しているというよりも、このNMFが不足していることにあると考えられています。

どんなに水分を与えても、その水分を保持するNMFが不足していれば、すぐに蒸発してしまい、お肌が乾燥してしまうのです。そのため、NMFはお肌の健康を保つ上で非常に重要な役割を果たしているわけです。

また、NMFは単に水分を保持するだけでなく、角層pHを弱酸性に保つ役割もあります。お肌のpHバランスが整っていることはアトピーや肌荒れの原因となる黄色ブドウ球菌などの「悪玉」菌の繁殖を防ぐ効果がるので非常に重要です。

さらに、NMFの一つであるウロカニン酸は天然の紫外線防御剤として、私たちの肌を紫外線から守ってくれます。

そのほか、NMFはお肌の質感や滑らかさ、弾力を維持する働きも担っています。

NMFと皮膚疾患

アトピーの方の約3割は、NMFの材料となるフィラグリンというタンパク質をうまく作れない遺伝子を持っているとされています。

このフィラグリン遺伝子に異常がある方は、手のひらの親指の付け根に深いシワがあることが多く、生まれつき乾燥肌になりやすい傾向があります。

ただし、フィラグリン遺伝子異常があるからといって必ずしもアトピーになるわけではなく、アトピー以外でも、全人口の約10%がこの遺伝子異常を持っており、慢性的な乾燥肌に悩んでいる方もいらっしゃいます。

また遺伝子の異常がない場合でも、アトピー患者の約7割ではアトピーを発症し、炎症が起こると、NMFの量が減少し、お肌の水分が失われることが報告されており、アトピーの方にとって、炎症を抑えることは、健康的なお肌を保つために非常に重要なポイントなのです。

悩みと目的に合わせて使い分ける

セラミドとNMFはどちらも肌のバリア機能にとって重要です。

セラミドは角層細胞の隙間を埋め、水にも油にも馴染みにくい特徴を活かして皮膚の水分を保持し、外から異物の侵入を防ぐ役割があります。

その一方でNMFは水分を保持し、pHを弱酸性に保つことで皮膚の常在菌叢を正常に保ったり、紫外線から肌を守る天然の紫外線防御剤として役割を果たします。

セラミドとNMF、それぞれ角層のバリアを担う構成要素として大事な働きがあるので、今回の内容を参考に、皆さんの肌質や悩みに合わせて適切なスキンケアアイテムを選んでください。